雑記別冊―チャリで渋峠を越えた話1

7/22(木)から23(金)にかけ、東京五輪開催を横目に草津まで出掛け、日本国道最高到達点である渋峠ロードバイクで越えてきた。
前の正月に東海道を走ったり走らなかったりしてから半年が過ぎ、その間ロードバイクには殆ど触れていなかったから、実質ペーペーもいいところな状態で約1600mのヒルクライムに挑んだことになる。
まあなんとかなるっしょと何も考えずに臨んでみたはいいが、本当に何とかなったのか。これから2回にかけて続くエントリが、少しでも僕と同じようなローペー(ロードバイクペーペーの略です)にとっての情報源となれば幸いである。

7/22(初日)長野原草津口草津

出発点である長野原草津口駅へは輪行で向かう。
東京で北陸新幹線に乗り換えて高崎へ、高崎から先は吾妻線直通の普通列車に乗る。吾妻線は群馬北西の山間へ至るローカル線で、おおよそ1時間半間隔のダイヤ。一本の遅れが命取りになる。

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始発で地元の川崎を5時半に出て、駅には9時前の到着。自転車の組み立てやら諸々の準備やらで予想以上に手間取り、駅を出たのがおおよそ9時半。標高約600mからのスタート。
草津温泉は更に20km程度北上した先にあり、何通りかの行き方がある。今回は白砂川沿いの国道292号線をしばらくひた走り、途中で林道小雨線に入るルートを選ぶ。
序盤はゆるーいアップダウンが続き、大したストレスも無い。沿道に吾妻支線の廃駅の遺構「旧太子駅」があり、早速寄り道する。

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資料館として整備されており、数百円払って構内に入れる。左の建造物は鉱石を積み出す時に使われていたホッパーらしいが、朽ちていて心許ない。
どうも展示されている貨車達は吾妻線で使われていたものではなく、大井川や静鉄辺りから譲渡された、悪い言い方をすれば雰囲気作りの為の置物らしい。何となく知らない方が良かったかもしれない。

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この時点では入道雲も白く映える天気だったが、午後からは五分五分の確率で雨が降るらしかった。このペースだと、渋峠に登っている最中で確実に降られる。寄り道も程々に草津を目指す。
旧太子駅から292号線に復帰してすぐ、六合郵便局を左に曲がると林道小雨線に入る。予備知識0、292を直進するよかショートカットできるでしょ、くらいの感覚で入ったもんだから、予想だにしなかった急勾配に早くも心折れる。

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写真だといまいち勾配の様子が分かり辛いが、まあ大分しんどい道のりだ。おまけに飲料も底が尽きそう、飯に至っては起きてから殆ど摂っていない状態で、ハンガーノックに似た症状が出始める。
こんな序盤も序盤でそりゃ無いわなと思うが、後になって考えてみても、今回の行程の中で最もしんどかったのはここだった。自転車を降りて押しながら歩き、ある程度落ち着いたら乗り、やっぱり無理だと再び降りては押し歩き、それをしばらく繰り返す。

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この辺りでおおよそ標高1000m近く。大した距離は走っていないが、既にこの景色。普通のヒルクライムならこの時点でわあ高いとかキャッキャキャッキャ言っていてもおかしくないのだが、我々が目指す地点は更に1200m先である。
自販を……自販を……と唸りながら走っていると、ある地点を境に急速に道が拓け、小雨集落へと抜ける。観光会社の事務所の脇に自販を見つけ、死に物狂いで漕ぎ寄っては本能的に選んだネクターが、こめかみから足の小指の血管にまで沁み入るようにうまい。
その日得た教訓、水分は積めれば積めるほど積んでおこう。多過ぎても死ぬことはないが、少な過ぎたら死ぬ。

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準備不足が祟って林道小雨線に強烈なトラウマを植え付けられたのはともかくとして、とりあえず草津温泉には辿り着いた。標高1200m也。あの有名な湯畑をバックに写真を撮る。
これが12時前で、近場の蕎麦屋に入ってきつねうどんを食べて一息ついたところで、さあどうしようかと、同行者と考える。

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前哨戦でへばってしまうような人間に、渋峠を越えるような気力も体力もあるワケがない。どうも午後から雨が降るってのは本当らしいし、それに折角草津に来たのに温泉をスルーするってのはどうなのよ。
そんなことを考えていたらいよいよ本格的に雨が降ってきて、萎えた。今日の夜から明日の昼にかけてはちゃんと晴れてくれるらしいし、今日はここで温泉に入るなり飯を食うなりして精をつけて、渋峠には明日の明け方に準備万全の状態で挑めばいいのではないでしょうか。結果、そういう方向で話がまとまった。
そうと決まればと宿を探すが、四連休初日、関東有数の人気温泉街、当日宿泊を受け入れてくれる宿は殆ど無い。一件だけ引っ掛かったのが、湯畑から少し離れた場所にあるユースホステル。最近は随分数が減ったが、要は僕のようなゲロ貧乏人、もとい、贅沢ができない学生向けに全国津々浦々の観光地に建てられた安宿である。

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外観も内装もホテルと言うよりは、小学生の頃に行った「自然の家」のソレに近い。内装もコンクリ打ちっぱなしで、学校のような雰囲気。フロントで鍵を貰って、部屋を開けたら2段ベッドとストーブが一つ、それでお終い。

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テーブルは無い、座椅子も無い、テレビも無い、ホテルや旅館にありそうなものの類は一切無い。簡素の極み、まさしく寝る為だけにあるような部屋。
草津の夏は涼しく、最高気温が25度を超えることも稀らしい。だからなのか部屋には冷房が無く、申し訳程度の換気扇が天井に備え付けられている。ただ冬は当然生死に関わるレベルで寒くなるから、ストーブはどの部屋にも完備されているようだ。
それでも僕達は真夏の坂を汗涎垂らしまくりながら越えてきた人間だから、扇風機でもいいから体を冷やす何かしらは欲しかった。

部屋にいてもしょうがないので、温泉街に出て風呂に入る。湯畑近くの日帰り入浴も受け入れている旅館に入れさせてもらったが、アホみたいに熱い。
草津の温泉はどこも熱いそうで、一部の施設では温度毎に浴槽を分けて、それを順番に入ることで徐々に高い温度に体を慣らす、所謂慣らし湯の手法を取り入れているという。そんなことは知らずに入ったもんだから、熱いを通り越して電撃が走るように痛い。両腕を日焼けしているから余計に堪える。
とは言え凄くいい湯でした。次はちゃんと覚悟を持って入りに行きます。

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風呂から上がって適当な店で夕飯を摂ると、日が暮れていた。
日没後のライトアップ湯畑は、全国の温泉地の中でも屈指の「映え」スポットとなる。

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昼の段階で、変な意地を張って渋峠に向かっていようものなら、コレを拝めることはなかった。当然温泉にも入れなかっただろうし、何より雨に降られて色々と悲惨な目に遭っていただろう。行き当たりばったりの決断ではあったが、草津一泊は正解だったかもしれない。

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翌日は3時半起き。朝日が昇るか昇らないかの時間帯に宿を出て、なるべく良い景色を良い天気の最中で拝むことに努めることにした。9時半には消灯して、ヒルクライムに備える。

2日目、メインの渋峠越えは次のエントリで。