雑記別冊―サブスク解禁記念、真に隠れたB'zの名曲達3/2009~2021

f:id:sonotenoyatsu:20210530213641j:plain

最終回である。自分でやっておきながら正直早く終わらせたかった。
今回は2009~2021と、活動21年目から現在にかけてのB'z。前回、前々回はこちら。

20周年を超えりゃ名実共に大御所バンド。B'zは過去「色々な理由」でロックメディアから徹底したスルーをキめられ続けてきたバンドだが、流石に20年間積み重ね続けてきたキャリアや人気をハイプと切り捨てることには難があるのだろうか、ここ10年は多数の若いミュージシャンがリスペクトを公言したり(考えられないことだった)、ROCK IN JAPANに出演したり(もっと考えられないことだった)、そのライブレポートがロキノンジャパンに載ったり(地球が滅んでも有り得ないことだった)と、その空気が大分良い方向に変わって行っているのをダイレクトで感じ取れる時代だったなと思う。継続は力なりを体現するバンドだ。
音楽的には00年代で試み続けたオルタナへの挑戦が陰を潜め、2人のルーツであるクラシックロックに最接近。2017年には「THE ONLY SURVIVING HARD ROCK BAND IN JPAN」なる不敵なスローガンまで飛び出した。ここに来て、B'zとはハードロックバンド(しかも日本唯一の生き残り)であることをセルフ定義。それが認められたのかどうかは知らないが、2019年にはとうとう「BURRN!」の表紙を飾った(宇宙が滅んでも有り得ないことだった)。
一方でリリースペースは年々緩くなっており、代わりにそれぞれのソロ活動が活発化した。よってこの時代にリリースされた曲は他の時代と比べても相対的に少なく、最初の10年間とは真逆の理由で選曲に苦労した。そのおかげでいまいち「真に隠れた」とは言い難い曲も入っているんですが、それは許してください。

Mayday!(17th Album "MAGIC" #9)

「MAGIC」は90年代中期の音使いが派手でキャッチーだった頃のB'zを00年代の質感で体現したようなアルバムで、近年の作品の中でも取っつき易く人気が高い。この曲は好例で、ハネたシャッフルビートや賑やかなブラスセクションは、それこそLOOSEやSURVIVEの頃のB'zを彷彿とさせる懐かしい音像。
他方、Aメロはパワーコードをブリッジミュートでダウンピッキングするだけのシンプルなバッキング。これが90年代であれば、多分クランチでややこしいカッティングを入れていただろう。この辺は00年代のオルタナ、モダン志向の残り香のような気がする。

ひとしずくのアナタ(18th Album "C'mon" #3)

ドロップDチューニングでサウンドとしては結構ヘヴィだが、イントロのディレイのリフやスペーシーな音色の打ち込みのお陰で、言い知れぬ浮遊感がある。
本人曰くアリーナツアーで披露したら客のノリが思うようなものじゃなかったらしく、ドームツアーではセットリストから外してしまったらしいが、ヘヴィなのに妙にフワフワとしていて、しかも16ビートと、ノレるかどうかってよりも、どこに焦点を当てて聴けばいいのかが難しいだけなんじゃないかと思う。ちぐはぐなピースを力技でハメ込んだような違和感を楽しもう。

アマリニモ(19th Album "EPIC DAY" #5)

縦横無尽に動くバッキングに始終引っ張られるようなミドルナンバー。Gメジャーでキャッチーな雰囲気の中、節々に一抹の寂しさを感じられるようなコードワーク。特にギターソロ中盤、Em以降の展開が泣かせてくれる。
「夜中、昔の恋人と暮らしていた町を車で通り過ぎる」というストーリー仕立ての歌詞。過ぎ去った日々に優しくなれそうな、それでもまだ縋っているものがありそうな――と、いつかの哀切をいたずらに積み重ねてしまう心理描写が素晴らしい。実は稲葉は派手な激情よりも、こうした静かなセンチメンタリズムを描くのが本当に巧い人だ。「人は寂しさを喰らい生きてゆく」とは、歳を取れば取るだけ分かってしまう名フレーズ。

世界はあなたの色になる(53rd Single "声明/Still Alive" 3rd Beat)

公開される度メチャクチャな興行収入を叩き出す劇場版コナンの主題歌。この時点で「真に隠れた」とは言い難いが、映画公開中は放置、半年に思い出したように配信限定シングルとしてリリース、その後は「声明/Still Alive」のカップリングとしてひっそり収録と、曲のタイアップと相反して扱いがあまりにもぞんざい過ぎる為、ここに入れさせてもらう。
映画は観ていないが、それにしてもファミリーアニメの主題歌にしてしまうにはあまりにもダークなサウンドとシリアスな(って言うか耳が痛い)歌詞に慄く。ミステリアスなAメロの進行は地に足が付かない印象、くるり佐藤をして「ホーンテッドマンションっぽい」と形容していたが、言い得て妙。サビでストリングスが合流して、ドッと視界が開けるかと思いきや大して開けないし、半音散りばめられたサビメロのおかげで、いまいち痒みに手が届かないような、梯子を外されたような気分。
とは言えこの曲の白眉は2番サビ終了後のブリッジからで、オブリが入ってからの、バンドとストリングスが一体になって息せき切るような展開には「コレだよコレ」と膝を打つ。とどめのギターソロは近年でも随一の傑作で、これこそがTAK MATSUMOTOの構成美。何と期待に応えてくれる男だろうか。たまにこういうのをしれっと弾いてくれるから僕はB'zファンを続けてしまう。
曲が持つスケール感やオーラは間違いなくA面レベルで、真に隠れた……と言うよりは、もっとB'z史においてフックアップされて然るべきだろう、という存在。こんなん埋もれさせておくのは罪でしょう。

Queen Of The Night(20th Album "DINOSAUR" #7)

松本曰く70年代後半から80年代初期に流行ったサウンドを思い返して作ったとのことだが、要はフュージョン色強めのAORをやりたかったんだろう。この曲が収録されたアルバム「DINOSAUR」が発売された前後、日本では、および一部の海外のニッチな層では空前の和製AORブームが巻き起こった。恐らく2人はまったく意識していなかったんだろうけれど、偶然リバイバルの潮流に合ってしまったところが何だか面白い。
Bメロの艶めいたカッティングや、サビ全体を包み込むようなディレイの音がB'zらしくなくていいなあとか思ったりするが、他方大サビ前のキメッキメのブレイクがあまりもB'zらしすぎて、結局そこが一番気に入ったりするんですよね。

Rain & Dream(21st Album "NEW LOVE" #9)

クラシック路線を加速させたアルバム「NEW LOVE」では、とうとう松本以外のギターを音源に乗せるという初の試みが見られた。それがあのジョー・ペリーで、この曲では松本とジョー・ペリーのギターバトルを後半2分の尺で余すことなく聴かせてくれる。かつてギターキッズだった頃のアイドルを自分のアルバムに呼んでギターバトルとは、何たるロックンロールドリームだろうか。
そこを除けば、ブルージーで贔屓目に聴いても派手さはゼロ。今回のアルバム全体がそういう作風であることを差し引いても、群を抜いて渋い。何か思い出すなあと思ったら、ブルースロックじみていた頃の初期フリー。こんな曲を日本で一番CDを売ったバンドが作って、それをアルバムで出して、何だかんだ30万近く売れてしまう、その事実が既に面白い。

きみとなら(4th Degital Exclusive "きみとなら" 1st Beat)

ドラマ「べしゃり暮らし」の主題歌。未発表曲として長いこと解禁を待たされ続けていたが、今回のストリーミング解禁に伴って配信限定シングルとしてリリース。
ジャケットは何だかやっつけじみているし「ついで」感が否めないが、ここまで引っ張ってしまうとこのタイミングで解禁しなければ永遠にお蔵入りだったろう。そういう意味で、この曲も「世界はあなたの~」同様、もっと大切に扱ってやれよという意を込めてこのリストに入れている。と言うのは半分建前で、他に適当な曲が思い浮かびませんでした。
何が良いかと言えば、近年のB'zにいまいち欠けていた「有無を言わせぬキャッチーさ」の片鱗を久々に覗けるところだ。一聴すれば恐らく一発で覚えてしまうサビの明瞭さ、分かりやすさ、それもまたB'zの魅力なわけで、そうなるとたまにはこういう曲が欲しい。清涼感も抜群で、これからやって来るだろうジメジメとした日本の夏には、なんとかこの曲に頑張ってもらいたい。

↑今回のプレイリストです。
そして誰得企画もこれで終了。普段の雑記よりもアクセスが伸びないってどういうことなんでしょう。君ら、もっとB'zに興味を持てよ。
何にせよB'zというバンドは「ウルトラソウル、ハイ」にまみれたワンパターンなパブリックイメージとは裏腹に、様々な試行錯誤を繰り返して、様々な変遷を重ねてきて今の地位に上り詰めた存在であることは、是非とも認識してもらいたい。コマーシャル性の楔をうまいこと利用して、色々と面白いことをやっている、実は大変にクレバーなバンドである。30年経って、ようやくそれに気付き始めた人をちらほら見ているが、それにしてもまだまだだろう。
そんなわけで、今回のストリーミング解禁を機会に、是非ultra soulやイチブトゼンブの遥か下の方のランキングに載っている、名前も知らないような曲を聴いてみてください。案外気に入ったりするかも分からないので。