雑記19

ローカル線オタクのジレンマ

JR西日本の社長が定例会見で「ローカル線の維持が難しくなっている」と述べた――というニュースを見た。
北海道や四国がジリ貧どころの騒ぎじゃないのはもう大分前から言われていたけれど、京阪神でドル箱路線を何本も持つ西日本もいよいよ赤字路線の維持に耐えられなくなっているらしい。

今後の在り方についても自治体を交えて協議していく、と続いていたが、加速する地方の過疎化にコロナ禍が追い打ちをかける状況じゃ、三セク化どころかBRTすら際どいんじゃないかと思う。
そのニュースに関連して、JR西日本の平均通過人員が1,000人/日以下の路線を図に表したものも見た。京阪神や山陽近辺には殆ど無く、大抵は北陸、山陰、あるいは陰陽連絡線に集中している。まあ、そうだろうなと思うが、山陰本線ですら一部分がそれに該当するのにビックリした。
そもそも陰陽連絡線ってのが中々曲者で、中国山地を突っ切る、あるいは麓に沿って走るわけだから、沿線人口が多いわけがない。その割にはトンネルやカーブや坂が多いから維持費がかかる。勿論岡山広島と鳥取松江を結ぶ需要はあるけれど、高速化に対応した、要は特急を走らせやすいように設備に金をかけた路線が既に伯備線智頭急行と2つも存在している以上、残りの路線に速達需要は無く、地域間輸送だけに焦点が当てられる。で、その地域間輸送の需要はどれだけあるのって話が始まる。
数年前に全廃された三江線は、上の全てに当てはまるような超ド級人いない人いないローカル線オブローカル線だった。沿線自治体の財政上の問題で三セク転換も特に考慮されず、いくつかのバス路線に切り分けられた。「天空の駅」宇都井駅も今となっては拝めなくなってしまったが、嘆いても後の祭りであるな。

もう10年近く前の夏になるが、青春18きっぷを使ってその辺りの路線に乗り、広島から松江に抜けたことがある。
広島から芸備線に乗り、三次で1両のワンマンカーに乗り換え、備後落合で1時間近く接続を待たされた後に木次線の、やはりワンマンカーに乗り――てな塩梅で、朝方に広島を出て、最終的に松江には夕方に着いた。速達性は望むべくもないが、沿線の風景を大分楽しめた。
備後落合で次の列車を待った1時間のことを、よく覚えている。かつて交通の要衝だったことを偲ばせるような広く古い構内に乗客は疎らで、線路の隙間には雑草が生い茂り、線路の向こうが蜃気楼で歪んで見える。山間の駅なだけに周辺にも街らしい街は無く、タクシーの営業所の跡が一軒あって、終わり。本当に静かな空間で、何もかもが鄙びた様はまさにロマンだった。こういうのが見たかったんだよなと、エラく感動した記憶がある。
こう書くと、廃れ行く様を拝んでキャッキャ喜びながら、いざ廃止されそうだと聞くと憂うという、まあ醜悪なことだ。ジレンマと書くには大分チャチな話だが、こういう理由で僕はローカル線の存廃の話を聞く度に、若干の後ろめたさを覚えてしまうことが多い。

それにしたって僕のような遠方に住む人間は中々乗る機会が無いから、本当に後悔する前に、今年の夏くらいにはもう一回備後落合に訪れたいと思う。
あと、宍道から松江へ向かう最中に拝んだ、宍道湖に夕陽が溶け込む車窓は本当に綺麗だった。行きたいところばっかりですね。